カルピスソーダが好きな話

わたしは4歳から13年間クラシックバレエを習っていた。小学生の時に通っていた教室は、デパートが入っているビルにある文化センターの中で開かれていた。

月曜日のレッスンが18時半に終わるとすぐに大人のクラスが始まるため、わたしたち子どもはそそくさと着替えて帰路につくのが毎週のことだった。しかし6年生の一年間だけは違った。同い年の友達と二つ年上の友達と一緒に三人で、その文化センターの休憩スペースにある自販機で、カップに入ったジュースを買って、「飲み会」と称しながらくだらない話で盛り上がった。その時に飲んでいたのがカルピスソーダだった。当時わたしは中学を受験するために塾へ通っていて、週に数回通っていたバレエを1回に減らしていた。一緒に飲み会をしていた同い年の友達も同じく中学受験でレッスンの回数を減らしており、二つ上の友達も2年前に中学受験を経ていた。詳しく話さずとも分かり合えるものが多かったのだと思う。週に一度全力でレッスンを受けた後わいわいすることは受験生として過ごした日々の中で何よりも楽しかった。何を話していたかはほとんど覚えていないが、バレエの話でもなく、受験の話でもなく、学校の話でも、好きな人の話でもなかった。覚えているのは笑い転げていすから落ちたことや、はしゃぎすぎてカップを倒し、床に敷かれたカーペットにカルピスソーダが染みたこと、騒ぎすぎて近くの部屋で開かれている講座の先生から注意されたこと。大人はいいなぁ、お酒を飲めて…と零したこと。中学受験、習い事の友達との夜のお喋り、炭酸のジュース。大人への憧れ。

これより楽しい飲み会に参加したことは、お酒を飲むようになってからも、未だない。